Road to Nowhere

Talking Heads - Road to Nowhere - 1985
 
ミュージシャンとしてだけでなく,俳優,映画監督,あるいは所謂アーティストとしても今なおマルチな才能を発揮しているデイヴィッド・バーン(僕の世代にとってはやはり坂本龍一,コン・スーと共にアカデミー作曲賞を受賞した映画「ラスト・エンペラー(1987年・米)」が最も印象深い)がニューヨークで結成したトーキング・ヘッズの 6th アルバム Little Creatures からの 2nd シングル。
 
ローリング・ストーン誌の The 100 Greatest Artists of All Time100番目に名を連ね,2002年には「ロックの殿堂」入りも果たしているトーキング・ヘッズだが,実のところ僕がちゃんと耳を傾けたアルバムは高校時代,同級生の執拗な勧めで手に取った Little Creatures のみ。もちろん,スティール・ギターを多用するなど所謂カントリー・ミュージックのエッセンスを大胆に取り入れた変革的アルバムだったことを知るのはその後ずいぶん時間が経過してからのことだったわけだが,全英最高6位を記録したこのシングルは僕の心を特に強く惹きつけた。
 
リリースから35年を経た今でも楽曲そのものの良さとデイヴィッド・バーンのヴォーカル・ワークの素晴らしさに異論の余地はないが,久しぶりに視聴した示唆に富むMVの秀逸な出来にも驚く。
 
出会い,愛し合い,やがて年老いてゆくカップル。段ボールに閉じこもり,ついには生まれ変わってしまう男性。田舎町の結婚披露パーティーを飛び出してさまざまな出来事を体験しながら砂漠の一本道を走り続けたデイヴィッド・バーンはついに冒頭に彼を送り出した面々との再会を果たす。懐かしい面々との再会は彼にとってゴールだったのか,はたまた新たなスタートラインだったのか…。そんなことを考えながら改めて耳を傾けてみると冒頭のリリックがとてつもない説得力を帯びる。
 
これからどこに向かうのかは分かっている/どこから来たのかは分からないけれど/
知識があるはずだというのも分かっている/でも/目の前で起こっていることが表現できない/
僕らはもう子供じゃない/自分たちが何を手に入れたいのかも理解している/
未来は確かなものであるはずだけれど/解き明かす時間が欲しい…
 
リスナーが年齢を重ねるにつれて徐々に味わいを増す,そんな1曲だと言えるのかもしれない。
 
 
 

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