Our House

1981年に In the City がホンダ・シティのテレビCMに起用されたことでここ日本でも一時爆発的なトレンドとなったマッドネス。ユニークなその In the City は長く僕の記憶に留まることになったものの,僕がマッドネスの楽曲に真剣に耳を傾けたのは実は1990年代中盤になってからのこと。太った女性への皮肉,あるいは隠れたゲイ擁護ソングなど諸説囁かれた You're the One for Me, Fatty のリリックがモリッシーの友人でもあるマッドネスのシンガー,チャス・スマッシュことカサル・スミスを題材にした内輪ネタであると知ったのがきっかけだった。
 
Madness - Our House - 1982
 
解散と再結成を繰り返しながら今なお1976年の結成当初のメンバーで現役活動を続けているマッドネスだが,彼らの長いキャリアにあって僕が最も好きなのはやはりロンドン・オリンピック閉会式でのパフォーマンスも記憶に新しい(とは言え,もう8年前の話にはなるのだが…)この曲ということになる。
 
1982年にリリースされた 4th アルバム The Rise & Fall からのリード・シングルで,最高5位を記録した本国イギリスのみならず全米でも最高7位まで駆け上がり,翌1983年にはアイヴァー・ノヴェロ賞で Best Song Musically and Lyrically を受賞。その後も数多くの映画,ドラマ,ミュージカル,テレビ番組で使用されるなど,2トーンの旗手である彼らのキャリア屈指のヒット・ソングとなった。
 
曲中,ほぼ全編を通して描かれているのは「通りの真ん中にある俺たちの家」を舞台に日々繰り返される所謂ワーキング・クラスの日常。
 
遅くに起き出して仕事に向かう親父/お袋は慌てて親父のシャツにアイロンを当てる/
そして/子どもたちを学校に行かせるために/ささやかなキスでお見送り/
でも/子どもたちは母親のことだけが気がかりなのさ/いろんな意味で…
 
気忙しく,しかし大きな変化もなく過ぎる毎日を描写しつつ曲中の主人公はこう回想する。
 
昔のことまでよく覚えているよ/全てが真実だったんだ/本当にいい時代を過ごしていた/
素敵な時間/幸せな時間/まるで一日を無駄にするように遊んで過ごしていたことだって覚えている/
俺たちを引き裂くものはないなんて言いながらさ/夢多き二人だったよ…
 
メンバーがヴィクトリア朝のテラスハウスでリリックの内容を再現したユニークなMVも見応え十分。
 
カサル・スミスは後に「俺たちはワーキング・クラスのピンク・フロイドみたいなものなんだ」と述べているが,こうした彼らのスタンスもまた,ワーキング・クラスの一大アンセムとしてこの曲が長く愛される要因だったと言えるのかもしれない。
 
 
 

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