The Homosexual

Momus - Tender Pervert - 1988
#4 The Homosexual
 
1988年にリリースされたモーマスことニコラス・カリーの 3rd アルバム Tender Pervert 収録曲。
 
モーマス自身はこの曲をアルバムのタイトル・トラックに考えていたようだが,クリエイションのアラン・マッギーの説得によって Tender Pervert としてリリースされることとなった。(もっとも,The Homosexual はさすがに露骨だったにせよ,「脆弱な性的倒錯者」を意味する Tender Pervert もそう大差はなかったと個人的には思うが…。)
 
以前述べたことがあるように,僕は HippopotamomusThe Phylosophy of Momus といった90年代前半のアルバムが最も好きだが,1989年の 4th アルバム Don't Stop the Night 以降,急速に打ち込み主体のサウンドへと傾倒していくモーマスの過渡期と言えばいいか,アコースティックとエレクトロニック・ポップが絶妙に共存する Tender Pervert が,これまで実に33作のアルバム・リリースを重ねている彼の長いキャリアにあって最も美しいアルバムだと思っている。
 
とりわけ,打ち込みを取り入れた新機軸を象徴するこの The Homosexual は,アコースティックで何ともセンチメンタルな魅力を湛えた In the Sanatorium と共に Tender Pervert の双璧を成す1曲だと言えるだろう。
 
僕は女性を愛している/でも/屈してしまっているようにも思う/僕は女性を愛している/
でも/そう言って奴らと遣り合うことにどんな意味がある?/「お前は生まれつきのホモセクシュアルだ」と/
僕を罵ってきた/全寮制の奴らや/工事現場の奴らと遣り合うことに…
 
NMEのレン・ブラウンが「歌詞を除けば秀逸」と評したように,冒頭から炸裂する変態的リリックに賛否はあれどこの凄まじい屈折っぷりもまたモーマスの大きな魅力。
 
奴らの精神障害が/正常者として通るなら/僕は/変わり者のままで結構だよ…
 
囁くようなモーマスのヴォーカルもどこか淡々とした打ち込み主体のトラックと不思議とフィット。アブノーマルなリリックを極上のメロディで綴る彼の見事なポップ・センスには脱帽するほかない。
 
あんたらの女房たちとヤッてやるさ/きっと快楽の声を上げながら歌い出すんだ/
あんたらには/100万年経っても聞こえやしない/僕は怖くなんかないよ…
 
カヒミ・カリィへの楽曲提供でも知られ,現在は大阪在住のモーマス。特にこうした初期の楽曲の多くに顕著なある種の「狂気」こそが「奇才」の名にふさわしいと言えるのかもしれない。
 
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿