Monkey Gone to Heaven

2004年の再結成から今なお現役で活動を続けるピクシーズはUSインディ勢では数少ない僕のフェイヴァリット。4th アルバム Tromp Le Monde (邦題:「世界を騙せ」)からの一連のシングルが彼らの最高傑作だという思いは今でも変わらないが,今日は僕がピクシーズを知るきっかけとなったこの曲を取り上げたい。
 
Pixies - Monkey Gone to Heaven - 1989
 
フー・ファイターズやジミー・イート・ワールド,フィーダーなどのアルバムでも知られるギル・ノートンによるプロデュースで1989年にリリースされた 2nd アルバム Doolittle(この Doolittle をピクシーズの最高傑作に挙げるリスナーも多い)からの 1st シングル。
 
エレクトラによるマーケティングが功を奏してビルボード Modern Rock Tracks チャートで最高5位を記録。ナショナル・チャートは最高60位止まりながら,メロディ・メイカーの Single of the Year で第22位,NMESingle of the Year では見事No.1に選出されるなど英市場においても初めてコマーシャルなヒットを記録した。
 
神がいたんだ/海底から海を支配していたが/ニューヨークとニュージャージーの間に沈む/
1,000万ポンドのヘドロに殺されちまった/そして/この猿は天国に行っちまったのさ…
 
天空の神の使いが穴に落っこちた/今は空にも穴が空いているのさ/それで/地面が冷えない/
冷えなければ/全て燃えちまう/みんな順番に/もちろん俺も/そして/猿は天国に行っちまったのさ…
 
ノイジーなギター,ブラック・フランシスの絶叫とポップ・センス溢れる優れたメロディの絶妙な共存が彼らのサウンド・デザインの肝と言えるわけだが,神話やSFといった要素を取り入れながらどこかシュルレアリスム然としたブラック・フランシスのリリックもまたピクシーズの大きな魅力の一つ。
 
人類が5なら/人類が5なら/人類が5なら/悪魔は6/悪魔が6なら/悪魔が6なら/
神は7だ/神は7だ/神は7だ/そして/猿は天国に行っちまったのさ…
 
とりわけ,ヘブライ語の数秘術をモチーフにしながら環境破壊に警鐘を鳴らした(と思われる)この曲のリリックは,チェロとヴァイオリンを加えて奏でられる独特のコード進行と共に強烈な印象を残す。
 
僕の拙い英語力では結局「この猿」が何を意味し,どうして「天国に行ってしまった」のか理解できないままというのが何とも口惜しいところではあるが,最後にこの曲の魅力を端的に表現したNMEのレヴューを引いておきたい。
 
「スマートな連中は弦楽器とグランジをミックスするようになっている。ピクシーズも例外ではない。まるで叫ぶようなヴォーカル,SF調の歌詞とギターによって構成される溶岩がリスナーの耳にこれまでとは全く異なる感覚で新たな穴を空ける。Monkey Gone to Heaven は耳触りの良いAORに染まったUSロック・シーンに詩的なゲロを吐きかけたようなもので,さらに B-sideManta Ray がスピーディな毒針でリスナーの腸をズタズタにしてしまうのだ」
 
 
 

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