Umbrella

これまで何度か述べているようにマニック・ストリート・プリーチャーズは今も変わらぬ僕の大のフェイヴァリットであるわけだが,歴史的傑作の誉れ高い 3rd アルバム The Holy Bible,その The Holy Bible と双璧を成す傑作 7th アルバム Lifeblood は別格であるにせよ,実のところバンドとしてのマニックスに対する僕の評価はそこまで高くない。
 
リッチー・エドワーズによる「4REAL事件」~「全世界でNo.1になる2枚組のアルバムをリリースして解散する」とブチ上げてリリースされた 1st アルバム Generation Terrorists の惨敗で忘れ去られるはずだったマニックスは,臆面もなくリリースされた 2nd アルバム Gold Against the Soul で再び世の嘲笑を買った後,稀代の傑作 The Holy Bible を創り出す。
 
その The Holy Bible に聴かれるソリッドなサウンド・デザインへと見事に結実したこの矛盾社会に対する彼らの反骨精神は当時まだ学生だった僕を強烈にインスパイアすることになるのだが,加えて…1995年のリッチー・エドワーズの失踪(2008年に死亡宣告)とブランク,失意の中でリリースされた 4th アルバム Everything Must Go による復活とその後の飛躍,8th アルバム Send Away the Tigers にもなお影を落とすリッチーの不在という残酷な現実…デビュー当時は嘲笑の対象でしかなかったマニックスは,しかし,The Holy Bible リリース以降に彼らが辿った数奇な運命によって,バンドの歴史をリアルに知る僕にとって次第にどこかシンボリックな存在へと変化していくことになるわけだ。
 
NME Awards 2008 by Various Artists - 2008
♯1 Umbrella - Manic Street Preachers
 
さて,既に30年選手となったそのマニック・ストリート・プリーチャーズがこれまで残した多くの楽曲の中から今日はコンピレーション・アルバム NME Awards 2008 に収められた至高のカヴァー Umbrella を。

オリジナルは今や押しも押されぬスーパー・セレブとなったリアーナが2007年に放ったビッグ・ヒット。3rd アルバム Good Girl Gone Bad からの 1st シングルとしてリリースされ,全英,全米共に見事No.1を記録した。

冒頭,評価云々と書いてはみたものの,ジェームス・ディーン・ブラッドフィールドのシンガーとしての力量を僕は非常に高く評価していて,特に初の全英No.1アルバムとなった 5th アルバム This Is My Truth, Tell Me Yours 以降,アルバム・リリースを重ねる度に表現力と艶を増す彼のヴォーカリゼーションは,例えばリアム・ギャラガーなどと並んで現代最高のUKロック・シンガーの一人に数えて差し支えないと個人的には思っている。

こうしたカヴァーにおいてもジェームスの力量は如何なく発揮されており(B. J. トーマスの Raindrops Keep Fallin' on My HeadWHAM!Last Christmas,果てはフランキー・ヴァリの Can't Take My Eyes Off You に至るまで,マニックスはこれまで多くの優れたカヴァーを披露している)とりわけバルバドスが世界に誇る歌姫の R&B ヒットというあまりに意外な選曲となったこの Umbrella におけるジェームスの印象的な歌唱は,如何にもロック然としたユニークなアレンジと共に今なお強く僕の心に残る。
 
Gold Against the Soul Tour で初めて彼らのライヴに参戦してから27年。3人の活躍が長く続くことを願って止まない。
 
 
 

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