We Built This City

25回となる「懐かしきドーナツ盤」。本日は,如何にも柔軟にポップ・ミュージックに接していた少年期の僕らしいと言うか,現在の僕であれば気には留めるにせよ,まず手を出すことはないであろう実にUS然としたこの曲を。
 
Starship - We Built This City - 1985
 
1996年に「ロックの殿堂」入りを果たしたジェファーソン・エアプレインの元メンバーによって結成されたジェファーソン・スターシップからミッキー・トーマス,グレイス・スリックを中心に派生したスターシップの 1st アルバム Knee Deep in the Hoopla からの 1st シングル。全英最高12位,全米では見事No.1を記録した。
 
「シスコはロック・シティ」という何とも恥ずかしい邦題が示すように,80年代のサンフランシスコ・サウンドの象徴的1曲として紹介されることも多いが,メンバーによれば特にサンフランシスコを意識して書かれた曲ではなく,曲中に挿入されたレス・ガーランドのMC中に「ゴールデン・ゲート・ブリッジ」や「ベイエリアのロック・シティ」といった表現が聴かれることから次第に「ロック・シティ=サンフランシスコ」というイメージが拡大していったんだとか。
 
 
冒頭に述べた通り,お世辞にも現在の僕の嗜好にフィットしているとは言えないものの,メリハリのあるクリアなサウンド・デザインとミッキー・トーマスによるハイトーンなヴォーカリゼーションが生み出す潔い爽快感は確かに聴いていて気持ちがいい。
 
交通機関としては唯一史跡登録リストに掲載されているサンフランシスコのケーブルカーの廃止が検討された際,この曲を使った大々的な市民キャンペーンによってその存続が決定されたり,NFLのサンフランシスコ49ersのホームであるリーバイス・スタジアムで常に熱狂的な大合唱を引き起こすなど,今なおご当地ソングとしての圧倒的な存在感を放つ一方,GQ誌の「人類史上最悪の1曲」に認定され,ローリング・ストーン誌による The Worst Songs of the 1980s では堂々第1位にランクされるなど不名誉な記録もまた枚挙に暇がない。
 
あからさまな大衆迎合,ポップ路線への転換がコアなファンの逆鱗に触れたという見方もできなくはないが,小難しいことは考えずに頭を空にしてこうした楽曲に耳を傾けてみるのもたまにはいいのかもしれない。
 
 
 

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