Mr. Wendal

Arrested Development - Mr. Wendal - 1992
 
スピーチ率いるアレステッド・ディヴェロップメントのデビュー・アルバムにして Hip Hop 史にその名を刻む歴史的傑作 3 Years, 5 Months and 2 Days in the Life of... からの 3rd シングル。ヨーロッパおよびオーストラリアではスパイク・リー監督の映画「マルコムX1992年・米)」のテーマ・ソングでこちらも僕の大のフェイヴァリットである Revolution との両A面シングルとしてリリースされた。
 
2018年にこの世を去ったスピリチュアル・アドヴァイザー,ババ・オージェイを含めた特異な編成も然ることながら,ブルース・ソースのサンプリングやドラマーを配したバンド・スタイルで生み出されるユニークなトラックが彼らの大きな持ち味。とりわけ,スティーリー・ダンの Peg のコード進行にスライ&ザ・ファミリー・ストーンの Sing a Simple Song をサンプリングしたこの曲に聴かれる軽快なトラックは,所謂ギャングスタ・ラップが隆盛を極めていた当時の Hip Hop シーンにあって一際鮮烈だった。
 
とは言え,軽快なトラックとは裏腹にそのリリックはなかなか硬派なメッセージ・ソング。
 
彼の名はミスター・ウェンダル/でも/誰も彼の名を知らない/だって/彼は誰でもないんだから…
 
ウェンダルという名のホームレスの窮状をリアルに描きながらスピーチは訴える。「自分の地位とか他人からどう見えるかとか,そんな理由でこの現実から目を逸らすべきではない。彼らの生活から何かを学ばなくてはならない」と。
 
スピーチのスムースなラップ,そして南部っぽさと言うか彼らの楽曲全てに感じられる独特の土の匂いも素晴らしい。
 
前述の Revolution3 Years, 5 Months and 2 Days in the Life of... からの傑作シングル TennesseePeople Everyday と甲乙つけ難いところではあるが,僕はこの Mr. Wendal を彼らのベストに挙げたい。
 
 
 

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