Stacy's Mom

米パワー・ポップ・バンド,ファウンテンズ・オブ・ウェインのベーシストであるアダム・シュレシンジャーが新型コロナウイルスによる合併症により52歳という若さでこの世を去った。

3月に体調不良を訴えて入院した後,検査によりコロナウイルス感染が判明。人工呼吸器の使用や鎮静剤の投与など重篤化が報じられていたが,2日,顧問弁護士のジョッシュ・グリアー氏が彼の死を公表した。

トム・ハンクスが監督を務めた1996年の映画 That Thing You Do!(邦題「すべてをあなたに」)の主題歌 That Thing You Do! によるアカデミー賞ノミネートや昨年5月にエンディングを迎えたドラマ・シリーズ Crazy Ex-Girlfriend への楽曲提供などでも知られ,近年はソングライターとしても非常に高く評価されていたアダムだが,個人的にはやはりファウンテンズ・オブ・ウェインのこの曲の印象が最も強い。

Fountains of Wayne - Stacy's Mom - 2003
 
2003年にリリースされたファウンテンズ・オブ・ウェインの 3rd アルバム Welcome to Interstate Managers からのリード・シングル。全英最高11位,全米最高21位を記録した彼らの最大のヒット曲で,受賞こそ逃したものの翌年のグラミーでは Best Vocal Pop Performance にノミネートされた。
 
如何にもパワー・ポップ然とした明快なメロディとヴォーカル・ワークの良さも然ることながら,やはりこのシングルの魅力はそのリリックとMVに依るところが大きい。
 
ステイシーのママは恐ろしく魅力的なんだ/ステイシー/放課後/君の家に行ってもいい?/
ちょっとプールで遊ぼうよ/君のママは/出張から戻ってきているんだろ?/
ママはいるよね?/僕が来るって知ってるんだろ?/
僕はもう子どもじゃないんだ/立派な大人なんだよ/わかるだろ…?
 
友人の母親や姉が妙に美しく魅力的に感じられるという甘美な経験に覚えのある男性読者も多いと思われるが,曲中の主人公の錯乱っぷりもなかなかのもの。
 
ステイシー/僕が君の庭の芝刈りをした時のことを覚えてる?/
君のママがタオル1枚巻いた姿で出てきたんだ/たぶん/彼女も僕のことが好きなんだと思うよ/
僕をじっと見つめたりもするしさ/「向こうを刈り忘れてるわよ」なんて話し方も最高だよ…
 
まさに思春期特有の妄想爆裂ソングといった趣だが,これまた少年の歪んだ憧れを強烈に刺激する One More Try を陰とするならこちらは陽。妄想爆裂ソング界(何だそりゃ?)の二大巨頭と呼んで差し支えないだろう。
 
加えて,楽曲の世界観に見事にフィットしたこの曲のMVもまた思春期の少年の妄想を駆り立てるに十分な出来。ニュージーランド出身のスーパーモデル,レイチェル・ハンター演じる Stacy's Mom の美しさたるや,いくら何でもそれはあり得ないだろうと思わず突っ込みたくなるような気がしないでもないが,(賛否はあれど)笑えるオチもなかなか秀逸だったと個人的には思う。
 
ともかくも2000年代を代表するパワー・ポップの逸品。アダム・シュレシンジャーの冥福を祈る。
 
 
 

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