Frankly, Mr. Shankly

The Smiths - The Queen Is Dead - 1986
♯2 Frankly, Mr. Shankly
 
1986年の歴史的傑作 The Queen Is Dead 収録曲。軽快なトラックに乗せて曲中の主人公が彼の雇い主と思しきミスター・シャンクリーをひたすらディスるというこの曲のリリックにはモリッシー一流の捻くれたセンスが光る。
 
僕の拙い和訳をご覧いただきながら進めよう。
 
率直に言います/シャンクリーさん/食べてはいけますが/僕の魂が腐ってしまうんです/
辞めさせてもらいたいんです/僕が辞めても惜しくないでしょうし/僕は音楽史に名を残したいんです
 
率直に言います/シャンクリーさん/僕の精神は病的なまでに衰弱しているんです/
僕の首筋には/21世紀を告げる新しい風が吹いているんです/
すぐに始めなくてはいけません/あなたなら分かるでしょう?/僕は音楽史に名を残しいたいんです
 
名声/名声/途方もない名声/名声が欲しくておかしくなっているのかもしれません/
でも/善人だとか聖人だとかになるより/とにかく有名になりたいんです/いつだって/いつだって
 
後述するが,この後,ひたすら罵声を浴びせられることになる「ミスター・シャンクリー」には実はモデルが存在しているわけだが,その直前,不意に挿入される主人公の独白がまた凄まじい。
 
でも/時々/とても満たされていると感じることもあるんです/心を病んだ友人たちと/
クリスマス・カードを作っている/そんな時なんですけど/僕は生きたい/僕は愛したい/
思わず恥ずかしくなってしまう/僕はそんなものを手に入れたいんです
 
「このまま働き続ける」よりも「心を病んだ友人たちとクリスマス・カードを作る」方が遥かに自分の心を満たしてくれるという何とも強烈な一節。こんなリリックが書けるのはモリッシーをおいて他には考えられまい。
 
続けよう。
 
率直に言います/シャンクリーさん/食べてはいけますが/僕の魂が腐ってしまうんです/
ええ?/あなたも詩を書いていらっしゃるだなんて/僕は気づきもしませんでした/
あなたが/そんなクソみたいに悲惨な詩を書いていらっしゃるだなんて/シャンクリーさん
 
お尋ねになるのなら/率直に言います/シャンクリーさん/あなたの存在は/
便秘で尻に溜まったガスのように不快なんです/失礼な言い方はしたくありません/
でも/率直に言わせていただきます/シャンクリーさん/ああ/あなたのお金を僕らにください
 
結局は「金をくれ」という身も蓋もない要求と共にこの曲はラスト迎えるわけだが,「ミスター・シャンクリー」のモデルがジェフ・トラヴィスと知れば,この皮肉たっぷりの罵倒にも思わず膝を叩かずにはいられない。
 
ジェフ・トラヴィスはザ・スミスが契約していた英インディ・レーベル,ラフ・トレードの創始者。1st アルバム The Smiths のリリース以降,ほぼザ・スミスがレーベルの財政を支えており,事実,バンド解散後の1991年にラフ・トレードは破産。2000年まで活動休止を余儀なくされている。
 
レーベルを支えているという自負とバンドに対する待遇への不満がこの曲のリリックの根底にあったというわけだが,それにしても,これだけポップに毒を吐いてのけるというのは,まさに奇跡とも言えるモリッシーとジョニー・マーのコンビネーションの妙。痛快と言えば痛快極まりないザ・スミスならではの1曲と言えるだろう。
 
 
 

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